便潜血陽性

便潜血陽性とは

便潜血陽性の「潜血」とは、肉眼では判別できない微量の出血を言います。このような血液が糞便中に混入していないかを調べるのが、便潜血検査です。糞便に血液が含まれていると結果が陽性になり、消化管のどこかで出血が生じている可能性が示唆されます。ただ、実際に出血が生じて便潜血検査が陽性になった方では、多くの場合に消化管のうち大腸から肛門までの範囲に出血の原因があることが知られています。このため、便潜血検査は、定期健康診断で大腸がんを発見するための手段としても用いられる検査です。

便潜血検査と大腸がんとの関係

検査の結果が陽性になった場合、消化管、なかでも特に大腸、直腸、肛門のいずれかで病変が発生し、この病変が出血を引き起こしている可能性が考えられます。 陽性の結果は、大腸がんや大腸ポリープの疑いを示すサインの1つです。ただ、痔の出血に加えて女性の経血が混入した場合も陽性の結果が出るため、便潜血検査だけで大腸のがんやポリープの確定診断を下すのは困難です。一方、がんやポリープが発生していても、出血がなければ、当然ながら便潜血検査で発見することはできません。 定期健診などで便潜血検査の結果が陽性だった場合、腸内の状態を確認するためにも、大腸カメラ検査を受けることを推奨しています。また、便潜血検査の結果とは別に、大腸がんの発症リスクが上昇する40歳以降は、定期的に大腸カメラ検査を受けましょう。 大腸がんは、発症に遺伝的な要因が関与している可能性が高いとされています。血縁者に大腸がんや大腸ポリープが発生している場合は特に、40歳未満であっても、定期的に検査を受けることを推奨します。

便潜血検査の陽性と陰性

便潜血『陽性』

調査結果によれば、便潜血検査で陽性だった方の半数で大腸ポリープが見つかり、2~3%の方で大腸がんが発見されています。逆に言うと、陽性でも大腸ポリープや大腸がんがあるとは限らず、痔の出血や女性だと経血が混入している場合もあり得るということです。すなわち、便潜血検査は大腸がんの発見に有効なスクリーニングの手段ではあっても、精度の点ではそれほど高くない検査だと言うことができるでしょう。 ただし、便潜血が陽性となった2人に1人で発見される大腸ポリープは、進行して大腸がんに至る可能性があります。また、たとえ100人に2~3人の割合だとしても、万が一にも大腸がんが発生していた場合には、出血が認められた時点で進行してきている確率が高いのも事実です。 このため、健康診断で便潜血が陽性だと言われた方は、ポリープやがんの有無を確認するためにも、できるだけ早めに当院にお越しください。

便潜血『陰性』

便潜血検査で陰性でも、それだけでは安心できません。初期の大腸ポリープや大腸がんでは、多くの場合に出血が認められず、これらの疾患を便潜血検査だけで発見するのは困難なことがその理由です。また、いくらか進行していても、排便時の刺激が少ない箇所に発生したがんでは、出血が見られない場合もあります。 このため、大腸がんの発症リスクが上がる40歳以上の方には、定期的な大腸カメラ検査を推奨しています。

便潜血の検査方法

消化器に何らかの病変があっても、必ずしも毎日出血するとは限りません。このため、便潜血検査では、糞便試料を2回採取する「2回法」が採用される例がほとんどです。この方法を用いる場合、1日目に便を1回採取し、間隔をあけて別の日にもう一度採取します。ただし、糞便試料を採取してから1週間を過ぎると血液の残存率が低下するため、実際に検査が行われる日から起算して1週間以内の範囲で、2日分を自分で採取します(そのことは、検査キットにも説明されています)。

検査で陽性だった場合

出血部位を明確にするために、速やかに当院を受診してください。便潜血以外の事項を確認するための検査や問診も行いますが、便潜血検査で陽性だった場合、特に大腸カメラ検査が有効です。 大腸カメラ検査では、ポリープが発見された場合に、数が少なければ特別な事情がない限りその場で切除することができます。また、病変が疑われる部位が見つかった場合、内視鏡で組織の一部を採取し、病理検査に出して詳しく調べることもできます。 いずれにしろ、大腸がんは早めに発見することが重要な疾患です。便潜血検査で陽性の結果が出た方には、精密検査を推奨します。